30代になってから絵を始めたい。
でも、上手い人は子どもの頃から描いている。今から練習しても、追いつけないのではないか。
そう考えて、道具や練習方法を調べるところで止まることがあります。
趣味として描くことや、自分の作品を作ることに、始める年齢の締め切りはありません。
ただし、「30代からでも絶対にプロになれる」と簡単に言うこともできません。趣味で楽しみたいのか、SNSへ作品を出したいのか、収入を得たいのかで、必要な時間と準備は変わります。
年齢だけで判断する前に、まず何を目指したいのかを小さく決め、実際に描いて確かめるほうが現実的です。
この記事では、30代の社会人が絵を始めるときに考えたいことと、最初の三か月の進め方を紹介します。
「遅いかどうか」は、何を目指すかで変わる
絵を始めたい理由は人によって違います。
- 趣味として好きなキャラクターを描きたい
- SNSで作品を発表したい
- 同人誌やグッズを作ってみたい
- イラストで小さな副収入を得たい
これらを全部「絵が上手くなりたい」という言葉にまとめると、必要以上に難しく見えます。
趣味として描くなら、ほかの人へ追いつく必要はありません。描きたいものが一つ描ければ、始めた意味があります。
SNSへ発表したい場合も、上手い人と同じ画力になるまで待つ必要はありません。作品を作りながら、見せ方や自分が描きたい題材を探せます。
作品の販売や副収入を考えるなら、絵の練習だけではなく、何を誰に届けるか、継続して制作できるかも考える必要があります。
目的によって難しさは違います。「30代だから遅い」とまとめず、まずどの段階を目指すのかを分けます。
子どもの頃から描いている人と、同じ条件で比べない
SNSでは、十代ですでに上手い人や、何年も作品を発表してきた人が目に入ります。
その人の現在の絵と、自分の一枚目を並べれば、差があって当然です。
年齢の差より、これまで描いてきた時間や枚数が違います。
だからといって、その差を埋めるために毎日何時間も描こうとすると、仕事のある生活には合いません。無理な予定を立て、数日守れなかったところでやめてしまうほうが問題です。
比較するなら、三か月前や半年前の自分の絵と比べます。
顔の向きが少し増えた。以前より短い時間でラフを作れた。一枚を最後まで仕上げられた。
変化が小さくても、次に練習することを決める材料になります。
30代の難しさは、年齢より生活の中にある
社会人が絵を始めるときに困るのは、年齢そのものより、まとまった時間を取りにくいことです。
仕事のあとでは疲れている。休日には家事や予定がある。一時間空いても、ソフトを開いて何を描くか考えているうちに終わる。
さらに、大人になると「初心者らしい絵」を人に見せるのが恥ずかしく感じることがあります。
仕事ではある程度できることが増えているのに、絵では線も思うように引けない。最初からそれなりの完成度を求め、完成しないままになる。
対策は、学生と同じ練習量を用意することではありません。
- 描き始めるまでの準備を減らす
- 一回の制作を小さくする
- 次にすることを前回の終わりに残す
- 公開する絵と、見せない練習を分ける
生活の中で再開しやすい形を作ります。
大人から始める強みもある
30代から始めると、子どもの頃のように自由な時間は取りにくいかもしれません。
一方で、自分が好きな題材や絵柄をすでに持っている人もいます。
映画、服、旅行、仕事、暮らしなど、これまで見てきたものも絵の題材になります。何を描きたいかが分からないときは、自分が長く興味を持ってきたものから選べます。
必要な道具や本を自分で選びやすいことも、大人の利点です。ただし、使えるお金があるからこそ、描く前に機材や教材を増やしすぎることもあります。
最初は、すでに持っている紙と鉛筆、タブレット、パソコンなどで始めます。数週間使って不便が分かってから、必要なものを買い足すくらいで十分です。
長期目標を決める前に、30時間か10枚だけ試す
始める前から「何年で上手くなるか」「仕事にできるか」を決めるのは難しいです。
まだ絵を描く生活が自分に合うかも分かりません。
そこで、最初は30時間描くか、小さな絵を10枚作るところまでを試用期間にします。
毎日一時間なら一か月ですが、週に三時間なら二か月半ほどです。どちらでも構いません。
この期間に確かめるのは、才能があるかどうかではありません。
- 描いている時間を楽しめるか
- どんな題材なら続きを描きたくなるか
- 仕事のある週に、何時間なら無理なく取れるか
- 練習と作品制作のどちらが苦になりにくいか
- 困ったときに調べ、もう一度試せるか
10枚作ったあとで、本格的に続けたいか、趣味として気が向いたときだけ描きたいかを考えます。
途中でやめても、始めた判断が間違いだったことにはなりません。実際に試したことで、自分に合うかを判断できます。
最初の三か月は、一周することを目標にする
最初から上手い一枚を作るのではなく、三か月で「描く、困る、練習する、完成させる、比べる」を一周します。
1か月目:小さな絵を作る
好きなものを一つ決め、小さな絵を何枚か作ります。
顔だけ、上半身だけ、身近な物一つでも構いません。ソフトや画材の使い方を覚えながら、一枚を最後まで進めます。
練習のための線だけを描き続けるより、完成した形を一度経験しておくと、自分がどこで止まるか分かります。
2か月目:困ったところを一つ練習する
一か月目の絵を見て、直したいところを一つ選びます。
顔の角度、手、ポーズ、色など、範囲を小さくします。一日にいくつも練習せず、一週間ほど同じ課題を試します。
何を選べばよいか迷う場合は、絵の練習で何をすればいいかわからないときの決め方で紹介したように、描いて手が止まった原因から決められます。
3か月目:もう一枚完成させて比べる
一か月目と似た題材で、もう一枚作ります。
同じキャラクターを描く、同じ構図を描き直す、似た角度の顔を描くなど、比較しやすい条件にします。
上手くなったかを感覚だけで判断せず、線、形、制作時間、最後まで進められたかを比べます。
変わらなかったところがあれば、次の三か月の課題にします。
毎日描くことを最初の条件にしない
仕事や体調によって、描けない日はあります。
毎日一時間と決めるより、週に使える回数を決めます。
たとえば、
- 平日2回:30分ずつ練習する
- 休日1回:一時間から二時間、作品を進める
- 忙しい日は、昨日の絵を開いて次の一手だけ書く
という形です。
一週間まったく描けなかった場合も、翌週に再開します。休んだ分を取り戻そうとして、急に長時間描く必要はありません。
一日一時間を取れる場合の組み方は、社会人が毎日1時間だけ絵を練習するなら、何をすればいい?でも紹介しています。
練習だけで数か月を使わない
大人から始めると、効率よく上達したい気持ちから、基礎練習を完璧にしてから作品を作ろうとすることがあります。
しかし、人体、パース、色、構図を全部終える日は来ません。
最初の月から、小さくても作品を作ります。
描きたい絵を描く。分からないところで止まる。その部分だけ調べる。もう一度作品へ戻る。
この順番なら、何のために練習しているかを見失いにくくなります。
模写を取り入れるときも、見本を完成させるだけで終わらず、自分の絵で一度使います。絵の模写は何を考えながらやればいい?で、その手順をまとめています。
SNSは記録に使っても、判定には使わない
絵を始めると、SNSへ投稿したくなることがあります。
公開することで、作品を完成させる区切りにはなります。過去の投稿が残れば、自分の変化も見返せます。
ただし、反応の数だけで上達を判断すると、描きたいものより反応されやすいものを探す時間が増えます。
始めたばかりの時期は、公開してもほとんど見られないことがあります。反応が少ないことと、練習が失敗したことは同じではありません。
SNSを使うなら、三か月前の絵を探すための記録場所としても使います。公開が負担になるなら、手元のフォルダへ日付を付けて保存するだけでも比較できます。
作品を販売してみたいなら、趣味の目標と分ける
30代から自分の絵を販売してみたい場合も、年齢だけで不可能と決める必要はありません。
ただ、上達すれば自然に作品が売れるわけでもありません。
誰向けに何を描くか、作品をどこで見せるか、何をどの形で販売するかといった準備が必要です。
まず作品を何枚か揃えます。そのうえで、同人誌、グッズ、ダウンロード商品など、自分の絵と生活に合う方法を一つ試します。最初から大きな売上を目標にせず、一つ出品するところまでを最初の区切りにできます。
趣味として描く時間と、売るために考える時間を分けることも大切です。すべての絵を収益につなげようとすると、始めたばかりの楽しさまで評価や数字に左右されます。
体力を使い切らない環境を作る
仕事のあとに長時間座って描くと、絵より先に肩や腰がつらくなることがあります。
机と椅子の高さ、画面の位置、手首に力が入りすぎていないかを確認します。短い休憩を入れ、痛みが出る描き方をそのまま続けないようにします。
道具を出すだけで面倒になるなら、すぐ描ける場所を一つ決めます。
デジタルなら、前回のファイルを開いた状態で終える。アナログなら、スケッチブックと鉛筆を同じ場所へ置く。
練習内容より先に、描き始めるまでの手間を減らすだけで再開しやすくなります。
まとめ:年齢ではなく、次の三か月を決める
30代から絵を始めることが遅いかどうかは、年齢だけでは決まりません。
趣味として描くのか、作品を発表したいのか、同人活動や小さな副収入を目指すのかで、必要な準備は変わります。
子どもの頃から描いている人に追いつこうとして、無理な練習量を用意する必要はありません。
まず30時間か10枚だけ試します。その間に、小さな作品を作り、困ったところを一つ練習し、もう一枚完成させて比べます。
今日始めるなら、持っている道具で30分だけ使い、好きなものを一つ描きます。
どのくらい続けたいか、どこまで目指したいかを決めるのは、その一枚を描いたあとでも遅くありません。

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